財団法人 大東会館

コロナ狂騒曲に警鐘を―守勢から攻勢へ(『不二』令和2年5月号巻頭より)

令和2年5月9日

不二歌道会機関誌『不二』令和2年5月号に掲載の福永理事長の巻頭言を転載致します。

武漢肺炎の猛威が世界を襲ひ、特に欧米各国でその被害は甚大となつた。感染死者数が最悪となつたニューヨークの只ならぬ事態を受け、「明日はわが身」とばかりに日本では連日ヒステリックな報道が続けられて来たが、政府も世論に尻を叩かれるやうに、戦後初めてとなる〝緊急事態宣言〟を発出、生活全般に亘る自粛が要請され、日本全体が今、欝々とした中にある。本誌では嘗て「徒に不安を煽ることも控へるべきであるが、安易な楽観論も慎むべき」と述べたが、要は正確な情報・数字を基に、平常心を失はず、冷静に事の推移を見定めることが肝要である。
ここ一ヵ月程の報道全般で常に疑問であつたのは、日々更新される感染者数を煽情的に報じつつ、一方、死者数についてはほとんど触れて来なかつた点である。感染者数よりも、その実態を掴むことの出来る〝死者数〟こそが
「正しく恐れる」ための判断基準となるべきである。そして日本は欧米主要国及び米国に比べ二桁以上も死者数が少ないのであるが、これをあへて隠さうとした報道の意図は如何なるものか。国民が油断せぬ為の使命感であつたのか、殊更不安を煽り視聴率を稼ぐ為であつたのか。何れにしてもその背後に、日本を貶め、日本の国力を削ぎ、国民の不安感情を煽り、現政権批判へ繋げようとする一つの悪意があつたことは、反日メディアの従来の行動原理から言つて明らかであらう。しかし、何時まで経つても東京がニューヨーク化しない為、メディアの論調も徐々に変化しつつある。
武漢肺炎の恐ろしさはその感染力にある。今後も医療崩壊を防ぐ為の努力を続けることは必要であり、ここで「安易な楽観論」を述べる積りはないが、そろそろ日本は守勢一方の陰的政策から、転じて積極的に攻勢をかける陽的政策に大きく踏み切るべきであらう。これは戦火の最中にある米英でも、今、力強く唱へられてゐることであるが、有力な治療薬として期待されるアビガン等の使用により重篤化を防ぎ医療負担を軽減させること、また抗体検査の拡充により感染拡大の実態を見極め、結果次第では経済活動の再開に踏み出すこと、今後暫くはこの二点が戦ひの主力とならう。感染死者数の桁外れに少ない日本は、米英などに比し、治療薬やワクチンの開発に於ても恵まれた環境にある。何故、日本人の感染死者数が少ないのか。先天性によるものか、BCGの効果か、文化的要因か、これは今後の研究課題として、今は売れ残り給食当番マスクの在庫処分にムダ金を注ぐよりも、治療薬・ワクチンの開発に尽力し世界に貢献する。これこそが、わが先人の精神に沿つた真に日本の歩むべき道であらう。
(福永)