財団法人 大東会館

元号を守るために①

平成31年2月28日

平成30年12月号の巻頭文より

 元号を守るために—共同通信の不可解な記事—

十二月十六日の共同通信の報道によれば、政府は、五月一日の新帝御即位後に改元の政令が公布された場合、同日の施行は困難で、改元は翌二日にずれ込むとの見解をまとめたといふ。又、五月一日の御即位と同時に改元できなければ国民生活にも影響を与へるため、政府は政令の決定時期を皇位継承前とし、新元号を事前公表する方針を堅持するのだといふ。
しかしこの記事には不可解な点が多い。先づ、一日に政令を公布すると、なぜ翌二日にずれ込むのか。記事によれば、五月一日の践祚当日は多忙な日程のため、政令公布は早くとも夕刻となり、この日に施行すると、一日が旧元号と新元号に二分され、国民生活に不便をもたらすといふこと。また、厳密に何時何分に改元されたのか特定出来ないといふことのやうだが、これは全く問題にはならない。
大正、昭和への御代替りの折は、先帝崩御の日に改元する「即日改元」であつたが、改元の日が新・旧の元号に二分された訳でなく、零時まで時間を遡り、この日はすべて新元号になることが定められた。この前例を踏襲すれば、遅い時間に政令が公布施行されたとしても、暦上、何ら不都合な点は無い。また、これが国民生活に一体どれほどの影響を及ぼすといふのか。
なぜ翌日の施行ではいけないのかも疑問である。平成の改元は、一月七日に政令公布、翌八日に施行される「踰日改元」であつた。この前例に鑑みれば、仮に施行が翌日になつたとしても、事前の周知があれば、不都合は無い。
この共同の記事自体「関係者が明かした」話とのことで信憑性に乏しいものだが、仮に事実を語るものであれば、これは事前公表を何としても行ひたい政府の全くの詭弁であると言はざるを得ない。
今回の共同の記事は「内定」等による事前公表でなく、飽くまで皇位継承前に「政令を公布」するといふものだ。この場合、今上陛下が次代の御代の新元号を允裁されることとなるが、これは「天皇と一体不可分」である元号の本義に反するもので、到底容認出来るものではない。
「天皇と共にある元号」を目の敵とする反国体勢力からすれば、元号そのものを否定せずとも、天皇と元号を引き離せば事足りるのだ。今、政府がやらうとしてゐる新元号の事前公表、前倒し決定とは、彼等の奸計に沿ふものであり、後世に必ず禍根を残すこととなる。
読売の世論調査では、西暦よりも元号を使ひたいと答へたのは五〇%であつたといふが、多くの日本人が、歴史伝統に基く権威、重み、正統性、倫理性、また土着的な懐かしさや、祖先に繋がる安心感などを元号に感じてゐるのではないか。しかし、それは飽くまでも元号が「天皇と共にある」故であり、これが「内閣の元号」となれば、元号離れが進み、その要因を作つた安倍内閣は、後世、皇国の歴史に断罪されることとならう。安倍首相は努々臣道を誤つてはならない。(福永)